台湾・香港インバウンド 最新トレンドとインバウンド施策
近年、アジアの近隣国からの訪日観光客数が増加しています。特に、台湾と香港からの観光客はその中でも大きなウェイトを占めています。今回は、台湾及び香港からの観光客に焦点を当て、その特徴や求める体験、訪日施策について考察します。
台湾 香港 インバウンドの特徴
台湾と香港は日本の近隣国として、歴史的、文化的、経済的な繋がりが深い。訪日観光客としての台湾人、香港人の特徴を以下にまとめます。
特徴
経済状態
台湾も香港も、一人当たりのGDPはすでに日本を上回っており、中流以上の層の訪日が増えている。これに伴い、高級な商品やサービスへの消費意欲が高まっている。
非日常を求める
台湾、香港の観光客が日本旅行に求めるのは「非日常」体験。例えば、伝統的な日本の文化や、日本ならではの季節のイベント、風景などを楽しむための旅が多い。
価値への投資
高品質な体験や商品に対して、出費を厭わない傾向がある。特に、他では得られない日本独自の価値を提供する観光地や商品に強い興味を示す。
訪問の頻度
台湾と香港は日本からの距離が近いため、短期間の訪日が容易。これにより、週末を利用した短期の訪日や、何度も訪れるリピーターが多い。
情報収集
SNSやインフルエンサーの影響を受けやすく、旅の情報収集や宿泊先の選定、観光地の選択などにおいて、これらの情報源を参考にする人が多い。
食の探求
日本のグルメや地域の特色ある食材に強い関心を持つ。ミシュランの星付きレストランから、地元で人気の居酒屋まで、幅広く食の体験を求める。
言語
両地域ともに中国語(繁体字)を主要な言語として使用するため、日本でのコミュニケーションや情報提供の際には、繁体字対応の資料や通訳の提供が効果的。
このような特徴を理解し、それに合わせたサービスや商品提供、情報発信をすることで、台湾・香港からのインバウンドを効果的に捉えることが可能となります。
台湾・香港・日本の人口とGDP比較
地域 | 人口(2022年末) | 一人当たりGDP(2022) |
---|---|---|
台湾(Taiwan) | 約2,326万人 | 32,811.000 米ドル |
香港 (Hong Kong) | 733万3200人 | 49,146.654 米ドル |
日本(Japan) | 1億2494万7千人 | 33,821.93 米ドル |
上記のデータを基に考察すると、
- 香港は一人当たりGDPが日本より高く、日本への観光旅行においても高級なサービスや体験を求める傾向が考えられます。日本側は、香港からの観光客に対して質の高いサービスや独自の体験を提供することで、更なるインバウンドの促進を図ることができるでしょう。
- 台湾も日本と比較して一人当たりGDPほぼ同様のため、日本旅行においても比較的豊富な予算を持つ層が多いと考えられます。日本の伝統や文化、食の魅力を強化し、台湾からの観光客に独自の体験を提供することで、訪日を魅力的にすることができるでしょう。日本人向けとほぼ同様の価格設定も効果的と思われます。
台湾 香港 インバウンドの共通点と違い
台湾と香港は、地理的にも文化的にも日本に近い存在として多くの訪日観光客を送り出しています。それでは、これら二つの地域からの訪日観光客にはどのような共通点と違いがあるのでしょうか。
共通点
言語
両地域ともに、公用語として中国語の繁体字を使用しています。これにより、日本での広告やサービス提供時の言語対応が容易になる。
地理的な近さ
日本に近く、航空便も多いため、短期の訪日が可能。週末旅行や短期休暇を利用した訪日が多い。
日本文化への興味
両地域とも、日本の文化、アニメ、食、ファッションなどに興味を持つ人が多い。
高い購買意欲
両地域ともに経済的に豊かな層の人々が多く、日本の商品やサービスに対する購買意欲が高い。
短期の訪日
地理的な近さから、短期間での訪問が多い。特に、週末を利用した3~6日間の旅行が一般的。
違い
文化的背景
台湾は民主主義の政治体制で人々は自由に意見を述べる傾向が強いのに対し、香港は中国の政治体制の影響を強く受けています。
政治体制
台湾は民主国家として運営されているのに対し、香港は中国の一部として「一国二制度」の下で運営されています。
消費行動
両地域ともに日本製品やサービスに高い関心を持っていますが、具体的な消費の内容や興味の対象には微妙な違いが存在します。
観光地の選好
一般的な観光地には共通の興味を持っていますが、それぞれの文化的、歴史的背景から、訪れる観光地やアクティビティに違いが見られることも。
これらの共通点と違いを理解することで、訪日市場へのアプローチやサービス提供において、より効果的な戦略を組むことができるでしょう。
コスパ重視
台湾人観光客の中には、コスパを重視する層もいます。日本の商品やサービス、特に食品、化粧品、家電、また観光地の宿泊施設や食事に関して、良質でありながらも手頃な価格で提供されるものを好む傾向があります。
しかし、全ての台湾人がコスパのみを求めているわけではありません。日本への観光やショッピングにおいて、独特の文化や伝統、質の高い体験を求める層も多いです。
そのためコスパを求める層だけでなく、さまざまなニーズや価値観を持つ台湾人を捉えるためのマーケティング戦略が求められます。
台湾人・香港人が行きたい日本の都道府県
台湾と香港からの訪日観光客が特に訪れたいと考える日本の都道府県は、日本の魅力的な観光地や文化、食、歴史などを背景に多様です。以下に、調査結果に基づく人気の都道府県を挙げます。
北海道
美しい自然風景、広大な土地、四季折々の風物詩、新鮮な食材とグルメ、スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツが魅力。特に冬の雪景色や夏のラベンダー畑は、台湾人・香港人に人気です。
東京
日本の首都としてのモダンな都市風景、ショッピング、グルメ、文化、歴史など多様な魅力が詰まった都市。有名な観光地(浅草、新宿、原宿など)や、最新のトレンドを求める人々にとってのメッカ。
京都
歴史的な建築物や文化、美しい風景が魅力。特に紅葉や桜の季節には、多くの台湾人・香港人が訪れます。祇園、金閣寺、清水寺などの名所があります。
大阪:
こ焼きやお好み焼きなどのグルメ、ユニバーサルスタジオジャパン、大阪城、心斎橋などの観光スポットが人気。また、台湾や香港からのアクセスが良好で、ショッピングやエンターテインメントが楽しめる。
青森
青森は、台湾や香港からの観光客にとっては、新鮮で未開拓の魅力がある。特に、ねぶた祭りや、青森のリンゴ、美しい海岸線や森林などが魅力となっています。
これらの都道府県は、台湾人・香港人が日本を訪れる際の主要なデスティネーションとして挙げられる場所です。それぞれが持つ独自の魅力や特色によって、多くの観光客を引き寄せています。
台湾・香港向けのインバウンドの施策
台湾と香港からの観光客を増やし、より良い体験を提供するためのインバウンド施策を以下に挙げます。
情報提供の充実:
繁体字の観光情報サイトやアプリの開発。
台湾・香港向けにネット広告等を活用し情報の露出強化。
言語サポート:
観光地やホテル、レストランなどでの繁体字の情報提供やアプリ等を利用した通訳サービスの充実。
繁体字に対応した観光案内所やインフォメーションの設置。
アクセス向上:
台湾・香港との航空路線がある空港からの交通アクセスの情報を提供。
消費促進:
台湾・香港向けの割引クーポンや特典の提供(台湾人は特にクーポン情報に敏感)。
繁体字での免税タックスフリーの案内や、観光地でのポイントカードサービス。
フィードバックの収集・活用:
台湾・香港の観光客からのフィードバックを定期的に収集し、サービス改善の参考とする。
コラボレーション:
台湾・香港のユーチューバーやインフルエンサーとの連携・協力を促進し、共同でのプロモーション活動。
シーズンオフの促進:
台湾・香港からの観光客向けにシーズンオフの特別キャンペーンやイベントを企画。
これらの施策を実施することで、台湾・香港からの観光客の満足度を向上させるとともに、継続的な訪日を促進することが期待されます。
まとめ
- 特徴: 台湾と香港の観光客は一人当たりのGDPが日本を上回り、非日常的な体験や地域の独自性を重視。出費には敏感ではない傾向があり、独自の魅力や消費者への伝え方がキーとなる。
- 共通点と違い: 両地域ともに繁体字を使用しているが、文化や政治体制には違いが見られる。
- 行きたい都道府県: 台湾・香港人が特に訪れたいと感じる都道府県は、北海道、東京、京都、大阪、そして青森。
- 旅行予算: コロナ後の訪日旅行予算は増加傾向。特に「美食」「季節」「宿泊」への投資意欲が高い。
- 施策: 繁体字の情報提供やアクセスの向上、地域の魅力の発掘やPR、台湾・香港とのコラボレーションなど、様々な施策を通じて台湾・香港からの観光客の満足度と訪日数を向上させる取り組みが求められる。
総じて、台湾と香港からの観光客を更に引き寄せ、日本の魅力を深く伝えるためには、彼らのニーズを理解し、それに合わせたサービスや情報提供が必要である。これらの施策や取り組みを通じて、日本と台湾・香港との観光交流が一層深まることを期待する。